2017年08月01日記載
職人の世界にある「石の上にも三年」を排除せよ
日本には多くのことわざがある。ことわざの多くはいつの時代でも心に響く言葉が多い。人間という生き物は世代を越えたところで本能的要素は不変だからだろう。

4月に新たに社会人生活が始まった人たちもそろそろ会社生活に慣れ始めてきたころと思われる。既に会社を辞めたいと思い始めている人もいるだろう。そんなときに登場するのが「石の上にも三年」だ。

初めての会社生活で逃げ出したい気持ちが芽生えた時、このことわざを新入社員に突きつけることで思いとどまらせてきた諸先輩たち。これから長い社会人生活において、サラリーマンであるか自由業であるかの違いはあれど、これからの長い人生を過ごす上で社会人として生活することに変わりはなく、目の前の事象から逃げたい新人の気持ちを思いとどまらせるには非常に有効なことわざである。

不慣れな社会人生活を始めたばかりの頃は、良くも悪くもその会社から学べる要素は多く、仮に嫌な仕事であっても、乗り越えることによって、将来、嫌な仕事をしないためにはどうすればよいかヒントにもなることも多い。つまり最低3年同じ職場で我慢することは、本人にとっても有効であると思っている。

一方、職人の世界でもこのことわざが多用されている。石の上にも三年どころか十年以上に置き換える世界すらある。しかし単なる技術習得する時間をはじめから3年と決めつけ縛りつける発想はナンセンスだ。

例えば、
「君たちには、この仕事を三年かけてじっくり指導してあげよう」
「お前に包丁を持たせるには三年早い。皿洗いしながら私の背中から学びなさい」
「この感覚を養うには三年かかる。慌てずゆっくり私から技術を盗みなさい」

職人の世界ではこの手の指導が実に多い。最初から3年のスケジュールを決めつけて教えていくのは指導者のエゴであり、技術継承にできるだけ時間をかけずに短縮させてこそ指導力といえるのではないだろうか。

経験値がものを言う農業分野ですら、数値化による管理が実現できはじめている。人に手による感覚こそがすべてと思う発想こそが古い考え方である。

親から子へ、そして孫へ。世代継承において過去の技術伝達時間を短縮させてこそ人類の技術進化を遂げることができる。寿司なんてものは数ヶ月でマスターできるし、ネタの目利きも判断材料を先輩から教えてもらい、得た情報をベースにひたすらトレーニングを繰り返せば、先代よりも短い時間で習得できるはずだ。

今や過去の膨大な経験値は、大抵は数値化できるし、蓄積されたビッグデータから瞬時に欲しい情報を取り出し、計算アルゴリズムによって未来予測すらできる時代である。今あるコンピュータ資産を有効活用して職人の世界から「石の上にも三年」を排除するべきである。
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